自らつくりだした籠の中に閉じこもっていたあの日。
籠の中でしか生きていけないものだと信じていたあの日。
肉体と心の苦痛を快楽と感じこませていたあの日。
全てが弱さと虚栄心から生み出された自業自得の生活が長く続いていた。
自ら望んでしまった悲劇的な主人公。
あたしはそんな主人公に酔いしれていた。
あの晩、ベッドの上で横たわりながら「死。」の予感がした。
散々、あたしを日頃のうっぷんを晴らすかのように殴る蹴るをした後、泥酔して熟睡する旦那の横で戦慄を覚えた。
本能的に行動したあの夜。
雨が激しく降っていたあの夜。
メタモルフォーゼ。
メタモルフォーゼ。
腫れた右目に激しい雨が叩きつけて激痛がはしっていた。
メタモルフォーゼ。
口の中は鉄の味しかしなかった。
メタモルフォーゼ。
左の鼻の奥から垂れ落ちる真紅の液体。
メタモルフォーゼ。
もはや、心臓の鼓動しか聞こえてこない両耳。
メタモルフォーゼ。
身体中には拭うことのできない、積重なった青黒い染み。
メタモルフォーゼ。
少しの勇気と行動で変わることが出来るんだと激痛から教わった。
死神は消え去り天女が舞い降りた。
昨日とは違う自分が視えた。
自律したあたしが視えた。
メタモルフォーゼ。
メタモルフォーゼ。
もう、大丈夫。
あたしは、理想とする人生を描くことが出来た。
激痛が教えてくれた、少しの勇気と行動のおかげで。
メタモルフォーゼ。
メタモルフォーゼ。
メタモルフォーゼ。
最後までお読み下さり誠にありがとうございます。
雅蓮。